抗凝血剤が、口内インプラント治療に及ぼす影響とは、どのようなものか?

筆者  Carlos Madrid 等

近年高齢化と共に心疾患や、血栓防止、バイパス手術後など、ワーファィン(抗凝血剤)が投与されることが増えてきている。以前はワーファリンの休薬、ヘパリン・減薬などで橋渡しをして抜歯などの外科手術を行うことが多かったが、近年では血栓や卒中などの危険性から休薬せず、外科処置を行う場合が多い。そこで本研究では ①インプラント治療中における、抗凝血剤投与中患者のリスク(血栓塞栓と出血の両方) を評価する ② インプラント治療中の、抗凝血剤投与中患者に対する、管理プロトコルを提示する  を目的に論文検索を行い、評価した。

材料・方法
論文の検索; 1966~2008にかけて発表された英語で書かれた論文をMedline,Cochrane,EMBASEで検索 

ガイドライン 
①プロトロンビン時間INR3.5以下の患者に対しては、簡単な1歯の抜歯、又は小規模 な口腔外科治療のために、ワーファリン療法を変更、又は中断すべきではない。 
②患者のINRが上限の尺度内である場合には、より複雑で侵襲的な口腔外科 治療は、例外となりうる。 INR3.5以上の患者は、侵襲的な治療前には必ず 用量調節のために、主治医に委託されるべきである。 

結論 
① 抗凝血剤の投薬を中断しない患者(INR 2-4)の、術後出血の危険性は、中断した 患者のそれと比較して、有意により高くないことが示されている。  (RCTsとCCTsに由来する結果より) 
② 異なる止血剤(トラネキサム酸洗口液、ゼラチンスポンジ、及びフィブリン糊)が比較された RCTsでは、術後の出血を防止するという点では結果は類似 
③ RCTsとCCTsに基づいて、 抗凝血剤の中断は、1歯抜歯などのような口腔外科手術 では勧められない。インプラント埋入の侵襲性は、それに自家骨移植の採取、 大規模な歯肉弁の挙上、或いは、骨切り形成が、骨エンベロップの外に及ぶ 危険性がある部位が関与しない限り、3本の歯牙の抜歯と同等であるが、 或いはより低いと見なされる。 
④ 抗凝血剤を投与されている患者では口腔外科手術後に、止血剤を局所適用する ことが勧められる。 
トラネキサム酸洗口液(4.8%、10ml,1日4回、2日間)、ゼラチンスポンジ、トロンビン含有 の生物学的接着剤は、術後出を制御するのに、同等に効果的であることが 示されている。 
⑤ 歯科用インプラントの埋入は禁忌であることを、証明は支持していない 
出典 Clinical Oral Implants Research