実践歯内療法 その治療選択のエビデンスとアプローチ 第5回 エビデンスに基づいた治療計画

商業誌;Qintessence/2020 5月
著者;嘉村康彦 田中利典 先生

1治療計画概論について
治療計画立案は正確な診断に基づき行われ、その歯の治療の可否を判断する。全顎的な治療計画を考慮し、その歯の歯内療法、さらには保存が妥当かどうかを判断する必要がある。
マイクロスコープ、CBCT,ニッケルチタンファイル、超音波器具、バイオセラミックスセメントなどの活用により、過去には抜歯を余儀なくされていたケースも長期的に保存可能となってきている。米国歯内療法学会が公表している難易度基準に従い、術前に治療の難易度把握したうえで、難易度の高い症例は必要に応じて専門医に紹介することが賢明である。また歯内療法の予後がよくないと判断される場合には抜歯という治療計画が代替案として提案されるべきである。

2歯内療法の予後
根尖部の健康状態、術前のレントゲンでの透過像の大きさなどは予後に影響があるとシステマティックレビューで判明されている。加えて、瘻孔、限局性の不快ポケット、術前の痛みの有無も非外科的歯内治療の成功率に影響を与えると述べられている。
術前の状態や症状は治療の予後に影響を与えるものなので治療計画をたてるうえで考慮にいれて検討されるべきである。
再治療は一般的に成功率は低いと信じられているようだが、そうとも限らない。しかし、再治療の場合、フレアアップや術後疼痛の確率は初回治療と比較すると高い。術前の透過像、充填材の終末位置や質、歯間修復物の質などは再治療の成功率に影響を与える。

3治療前の留意点
レントゲン像上で透過像が認められるという事実だけで治療開始することは時期尚早である。その歯がいつ治療がおこなわれ、治癒傾向にあるのか拡大傾向にあるのかの判断が必要である。多くのケースで治療後2年以内に治癒が認めらるだろう。まれにレイトヒーリングを起こすこともあるが、一般的には4年後のレントゲン上で治癒が認められなければ再治療もしくは外科的治療が必要と考えられている。
また治療開始するいえで、①診断がつけられるかどうか②修復可能かどうか③エンドペリオ病変の有無④歯根吸収の有無⑤レントゲンの質⑥身体的制約⑦解剖的問題、を検討したうえで治療開始するべきか判断する。

4非外科的歯内再治療の介入について
初回治療と比較すると再治療における治療の判断は難しいことが多い。
なぜ現在の根管治療が失敗したのか?
細菌感染源が同定できるか?
以前に撮影したエックス線写真は入手可能か?
再治療が物理的に可能であるか?
歯内以外のところに原因がないか?
この歯が全顎的治療計画にどのように関連しているのか?
重要度はどの程度か?
患者の理解度協力度はあるか?
などを考慮し、原因が同定されるまでは進められるべきではない。常に外科治療の必要性もあると考え、説明をするべきである。

5歯内外科の介入
非外科的歯内治療は根管外感染や根管外異物の除去や歯根膿胞の治療は困難であると考えられており、病院が根管内微生物でない場合は従来の非外科的歯内治療は奏功しない。
歯内外科の介入において意外と見落としがちなのが歯冠側の漏洩である。カリエスがある場合は外科の介入ではなく、原因の除去をまず行う。
また常に抜歯も代替治療案として提案検討されるべきである。