ユニバーサルアドヒーシブのダブルアプリケーション法を検証する

初期接着強さおよび接着疲労耐久性への効果
まとめ
The Quintessence. vol.38 No.10/2019

ユニバーサルアドヒーシブは、組成とともに臨床術式においても、従来のシングルステップセルフエッチアドヒーシブと類似点が多いとされている。その優れた操作性とともに汎用性が高いところから、臨床における使用頻度が増加している。特に異なる被着体に対して接着性を有するという利点は、直接修復のみならず間接修復あるいは補修修復を行うことが出来るという利点を有している。さらに歯質に対してエッチ&リンス(ER)モード、セルフエッチング(SE)モードあるいはエナメル質のみをリン酸エッチングするセレクティブエッチングモードと、異なるエッチング手法を選択可能としている。この特性は、窩洞の大きさ、深さ、位置あるいは窩洞を構成するエナメル質と象牙質の割合などを勘案して、それぞれの症例に適したエッチングモードを選択することを可能としている。
ユニバーサルアドヒーシブの接着強さは、従来のシングルステップSEシステムと同様あるいはそれ以上の値を示すものの、2ステップSEシステムと比較すると初期接着強さのみならず、接着疲労強さにおいても低いとされている。
接着耐久性の劣化因子として、①歯質脱灰能②脱灰部へのモノマー浸透性③歯質との化学的接着系形成の3点が挙げられる。アドヒーシブ層の厚径は、破壊力学的観点から考察すると、機械的ストレスによってアドヒーシブ層内に生じた亀裂の先端には組成変形領域が形成されこの領域の大きさは亀裂の進展と接着界面での破壊に関連している。すなわちアドヒーシブの厚さが組成変形領域に比較して十分に厚い場合では、応力を分散させる能力が大きくなり、破壊に対する抵抗性向上に寄与する。したがってアドヒーシブ層の厚さについては、これが有する機械的強度をともに組成変形領域の存在を考慮する必要がある。
接着耐久性を向上させる方法として、アドヒーシブ2度塗り(ダブルアプリケーション)が有効と考えられる。臨床的には操作ステップが増加するが、歯質に対する長期接着耐久性向上においてはその効果が期待される。また初期接着強さを向上させるためには、リン酸エッチングを行うことが有効な手法となる。ダブルアプリケーション法を行うことによって、SEモードおよびERモードいずれにおいても1度塗り群に比較して有意に高いエナメル接着強さを示した。この傾向は、象牙質においても同様であった。