誤嚥性肺炎予防は次のステージへ まとめ 
歯界展望 Vol135 NO6.2019.6

誤嚥性肺炎の病因と病態
今日、肺炎による死亡率が上がり、2011年に日本人死因第3位となった。
効果的な薬を投与しても、なぜ死亡率は上がるのか、これが誤嚥性肺炎の一つの特徴で、すなわち、抗菌薬で治療するだけでは死亡率は下げられなくなっている。内科の立場からすると、高齢者肺炎=誤嚥性肺炎と考える。60歳を過ぎると、誤嚥性肺炎が半分を占め、以降どんどん増え90歳以上では9割以上を占める。
呼吸器内科、老年内科の立場では、高齢者肺炎の病態を、誤嚥の問題、口腔内の不衛生の問題の二つに分けている。そのほかに栄養状態の問題も加え三つを主原因と考えている。それらは、一般の肺炎とは無縁な状況で、口腔内の衛生状態や嚥下状態が、高齢者の肺炎の原因、病態として深く関係するということがここ10年、20年で分かってきた。

脳梗塞から誤嚥に至るまでの機序として、ドパミン作動性の神経と迷走神経知覚枝の機能低下があり、その結果、嚥下反射が低下して咳反射が低下し、それにより誤嚥が生じ誤嚥性肺炎が起こる。この経路のどこかを補うことができれば肺炎は防げるし、口腔内の衛生状態を改善すれば、誤嚥性肺炎の頻度を減らすことができるのではないかと考えられている。
もともと誤嚥性肺炎は、誤嚥が原因で口腔内の細菌が肺へ流れ込んで引き起こすため、歯科が関与する重要性としては、肺へ流れ込んでも肺炎になりにくいように、口腔内のを清潔にしておくことだと考える。

口腔ケアと肺炎予防の効果
介護者による毎食後の口腔清掃に加えて、週に1回、歯科衛生士による専門的、機械的な口腔ケアを行うグループ(口腔ケア群)と入所者本人ないし介護者による従来通りの口腔清掃にとどめるグループ(対照群)との間で比較研究を行った。その結果、口腔ケア群では発熱者が半減し、肺炎発症者も約4割減少し、肺炎にかかった場合の死亡率も低下し、重症化を防げるという大きな効果が実証された。