トピックから紐解く歯内療法 まとめ

Single visit Versus Multiple Visits Endodontics  一回法と複数回法

歯界展望132NO.42018-10

根管治療における一回法とは、初回の治療において、根管形成、根管洗浄、根管充填までのすべてのステップを終える治療法を指す。これに対し、複数回法とは、根管貼薬を行った後に根管充填を行うやり方で、根管貼薬までが初回に終えられたなら二回法であり、根管貼薬までに2回、あるいはそれ以上の回数を要したのであれば、最低でも3回法となる。
一回で終わることができれば経済的であり、患者にとってもメリットがあるだろう。
術後性疼痛に関するメタアナリシスによると根管治療後72時間以内の不快感、1週間における不快感、根管治療後の歯肉腫脹、フレアーアップに関して、1回法と複数回法で統計的有意差は認められなかった。

根管治療の意義
抜髄処置を無菌的に行うことで、症状の消失をはかること、またそれを維持することが可能になる。それゆえ、根管治療中に細菌をさらに減らすステップ(根管貼薬)が必要ないため、時間的な制約がなければ一回法で終わらせることに問題はない。
一方、感染根管では状況が大きく異なる。根尖周囲に病変を有する歯の根管内には、多くの細菌が存在することが分かっており、病変を有する歯を治癒に向かわせるためには、これらの細菌を除去し、限りなく無菌に近づけることが必要である。つまり、感染根管における根管治療は、bacteria reduction(細菌を減少させること)がキーポイントになる。

根管治療におけるbacteria reduction
根管治療における各ステージの根管内の細菌培養陰性率
根管内の細菌数は、根管形成前半までは生理食塩水と次亜塩素酸ナトリウム溶液(Naocl)とで差はみられないが、最終形成終了時(40号)にはNaoclを使用した方が細菌数を減らすことができ、Naoclの効果を得るにはある程度の拡大が必要なことが示唆された。また最終形成終了後、水酸化Caを用いて貼薬を行ったところ、さらに細菌数は減少した。
また、根管治療時の細菌数の減少と病変治癒の関係については、治療により細菌総数が減少し一定ラインの閾値を下回った時に病変の治癒が起こると考えられている。
従って、病変が治癒するかしないかは、治療によって細菌数がこの一定数を超えられるかが重要なのである。

一回法と複数回法における根尖性歯周炎の治癒率は、現時点で得られるエビデンスでは、両治療法において病変の治癒率に大きな差は認められない。というのが一般的なコンセンサスのようである。
また、最近の論文では、ヒトにおける根管治療で、水酸化カルシウムによる貼薬を行った根管と行っていない根管では、内部の細菌の残存程度に大きな差があることが組織学的にも明らかであった。との報告もある。このことから、実際にデンタルX線像上での違いは見られなくても、一回法において、組織レベルでは、炎症反応が残存している可能性が示唆されている。