ヒトの抜歯窩における組織の変化。軟組織の二次治癒を伴う顎堤保存と、自発的な治癒を比較する。

著者
Antonio Barone等
目的
顎堤保存治療を行った抜歯窩と、自然治癒した抜歯窩での、硬組織と軟組織の変化を調べ、比較することにあった。
材料と方法
専用のソフトを利用して、それぞれの患者を、試験群か対照群に、無作為に割り振った。抜歯後に、抜歯窩を慎重に視診し、全ての肉芽組織を取り除いた。対照部では、血餅を安定させるために、シルク縫合糸で縫合を行い、移植材は使用しなかった。
試験部には、ブタの皮質海綿骨を移植し、コラーゲンメンブレンを装着した。実験部のメンブレンは全て、二次的な創部治癒を伴いながら、口内に露出したままにしておいた。
頬側面に歯槽骨が存在していた場合は、その厚みを、抜歯時に骨壁の端から1ミリのところで、カリパーを用いて慎重に測定した。以下の臨床パラメーターをベースライン時と4か月後のインプラント埋入時に調べた。垂直的な骨の変化、水平的な骨の変化、並びに角化歯肉の幅。インプラントの埋入時に両群で、長さ、径、並びに付加的な骨増多の必要性を調べた。
結果
対照群での近心面、前庭面、遠心面、及び舌側面における垂直的な骨吸収量はそれぞれ、1±0.7㎜、2.1±0.6㎜、1±0.8㎜、及び2±0.73㎜であったことが示された。また水平的寸法の変化としては、3.6±0.72㎜の平均吸収が示された。
試験部での近心面、前庭面、遠心面、及び舌側面における垂直的な骨吸収量はそれぞれ、0.3±0.76㎜、1.1±0.96㎜、0.3±0.85㎜、0.9±0.98㎜であったことが示された。試験部での水平的骨吸収量は、1.6±0.55㎜であった。角化歯肉の、歯冠方向への移動量は、対照部では0.7㎜であったのに対し、試験群では1.1㎜であった。更に、インプラント埋入時に、付加的な骨増多を必要とした部位の割合は、対照群では42%であったのに対し試験群では7%であった。
結論
本研究で報告して治療法に従って、collagenatedブタ骨と、吸収性メンブレンを利用して行った歯槽堤保存は、抜歯後の輪郭の変化を、制限することができた。最後に試験部の方が対照部よりも、唇側面の角化組織はより良く保存されたことが示され、移植部には移植無しの部位に埋入したインプラントよりも、より長く、より太いインプラントを埋入することができた。