抜歯窩シールド法。原理証明報告。

著者
Markus B Huerzeler 
出展
JCP.2010 37 855-862
目的
インプラントの即時埋入を併用した、歯根膜頬側部維持(抜歯窩シールド法)の効果を、組織学的に評価し、臨床的に実証することにあった。
材料と方法
一匹のビーグル犬を用いた。
下顎第三小臼歯と第四小臼歯をフィシャーバーで分割した。
次に、粗粒のダイヤモンドバーで、小臼歯の遠心部の歯冠を切断した。
歯根の舌側部で、インプラントのための骨切りドリリングを行った後、抜歯窩の舌側領域、遠心領域、および近心領域に残っていた歯根片を完全に除去した。続いて歯根片の内面に、エナメルマトリックスデリバティブを塗布した。
歯根片の頬側部は頬側面骨板から約1mm歯冠よりのところまで残しておいた。
インプラントをメーカーの指示に従って埋入し、頬側歯根片の高さに設置した。
4本のインプラント中2本は意図的に、頬側歯根片と密着させながら埋入した。
高さ4ミリのヒーリングアバットメントを連結し、インプラントの埋入から4ヵ月後にイヌを屠殺した。
結果
4本全てのインプラントが、組織学的炎症反応を伴わずに骨統合し、歯根片は吸収しなかった。
頬側面では歯根片は、生理的歯周靭帯によって、頬側面骨板に付着していた。
歯牙片の舌側寄りでは、新しく形成されたセメント質が発見された。
歯牙片の中にインプラントを埋入したエリアでは、インプラント表面上で直接、セメント質が新しく形成されていたことが示された。
結論
インプラントの埋入中に、歯根の頬側寄り部分を維持しても、骨統合は妨害されないようで、それは頬側面骨板を保存するのに、有用であると思われる。
臨床的関連性
研究のための科学的論拠
本原理証明実験の目的は、インプラントの即時埋入を併用しながら、歯牙を部分的に維持した後の生物学的反応を、組織学的に評価することにあった。
主要所見
維持した歯根では、炎症反応も吸収反応も見られなかった。
インプラントを歯根片と直接接するよう埋入した症例では、歯根片の内側部分と、インプラント表面のトップで、歯根セメント質が新しく形成されていたことが発見された。
実用的意義
歯根の一部を維持する方法は、骨統合を達成するために実行できる方法である。
それによって、頬側面骨板を保存できる可能性もある。