中等度から重度の歯周炎の既往歴を有する患者に対する補綴修復。長期評価。

著者:Christian Graetz 等
目的
中等度から重度の歯周炎患者に対して行った、保存的な歯周治療と補綴治療の長期アウトカムを評価した。若年患者(YG)と中年患者(MG)から成る群を、能動的歯周治療(APT)後に装着した、固定式補綴物(FDP)と可撤式補綴物(RDP)の生存について、比較した。また、10年以上に渡る支持的歯周治療(SPT)中の、機能的咬合状況も分析した。
方法:本マルチ症例シリーズでは、APTを受けた後に、14年以上に渡り、SPTを定期的に受けていた、68名の患者のデータを(YG34名、MG34名)、後ろ向きに分析した。歯牙の喪失、咬合の状況、並びに、補綴物の生存と合併症を、記述的、比較的に評価した(t検定)。
結果
YGとMGは、年間の歯牙喪失について、統計的に異なっていなかった(p>0.05)。YGとMGのそれぞれ75%と69%で、SPT中に、機能的咬合状況は維持されていた。両年齢群で、APT後に装着された修復物は、高い生存率を有していたことが示された(100%)。FDPとRDPの、最終SPTまでの平均生存期間は、YGとMGでそれぞれ、15.2年と11.6年、及び12.5年と13.1年であった。
結論
若年と中年の、いずれの重度歯周炎患者に装着した補綴修復物の生存率も、補綴前にAPTが行われ、SPTが定期的的に行われた場合には、高かったことが示された。
臨床的関連性
研究のための科学的論拠;中等度から重度の歯周炎患者に装着された、補綴修復物の生存と合併症に関する研究は、数少ない。故に本研究では、APT後に装着した補綴修復物の生存を、10年以上のSPT中に後ろ向き分析した。
主要所見
残存ポケットに対する後の再治療を含む、定期的なSPTを受けている患者では、歯牙喪失は、比較的希な事象であることが示されえた。咬合する接触エリアの分析によって、多くの患者では、咀嚼ユニットの機能的グループが、維持されていたことが示された。これらの患者では、APT後に装着された補綴修復物の生存率は、高かったことが示された。
実用的意義:中等度から重度の歯周炎患者を、固定式補綴物と可撤式補綴物で修復することは可能であり、骨喪失が50%を超えている支台歯でさえ、高い生着率を有する。しかし、装着はAPT後に行われる必要があり、また、残存ポケットのその後のデブリドマンを伴う、定期的なSPTが、実行される必要がある。隣接歯の事前計画を含めた、歯周修復と補綴修復の、包括的な治療計画を立てることは、SPT中の技術的、及び生物学的合併症を、最小限に抑えるための手助けとなる。レントゲン像上骨喪失のみに基づく、抜歯の早すぎる決断は、良好な歯周メインテナンスプログラムの存在下では、不適切であると思われる。
(2013 John Wiley & Sons A/S. Published John Wiley & Sons Ltd)