インプラントの抗菌ペプチドコーティング。ヒト細胞のための、組み換えヒトベータディフェンシンー2の生体互換性を調べる。

著者:Patrick H.Warnke 等
目的
インプラントなどのような口内の人工材料には、細菌によるコロニー形成というリスクがある。上皮表面上と数種類の間葉組織内で、幅広いスペクトルの抗菌機能を発揮する、陽イオン性の小規模な抗菌ペプチドである、ヒトベータディフェンシン(HBDs)は恐らく、そのような汚染を減じるのに役立ちうる。HBDsは、保護的な免疫調節作用も有し、骨リモデリングを促進すると報告されている。故に本研究では、培養細胞の増殖と生存に対して、組み換えHBD-2が及ぼす作用を、調べることを目的とした。
材料と方法
ヒト間葉幹細胞(hMSCs)、ヒト骨芽細胞、ヒト角化細胞(対照)、及びHeLa癌細胞ライン(対照)を、組み換えHBD-2(1、5、10,または20μg/mL)と共に培養した。細胞の増殖と細胞毒性をそれぞれ、水溶性テトラゾリウム塩(WST-1)アッセイと、乳酸脱水素酵素アッセイで評価した。
結果
ここで試験したどの濃度のHBD-2も、hMSCs、骨芽細胞、角化細胞、そしてHeLa細胞にとって、有毒ではなかった。また、試験したどの濃度のHBD-2で処理した後でも、hMSCsと骨芽細胞の増殖は増え、20μg/mLのそれで処理した後では、角化細胞の増殖が増えた。その一方で、HeLa癌細胞は、ここで試験したHBD-2に影響されなかった。
結論
ヒト間葉幹細胞、骨芽細胞、並びに角化細胞に付加される、組み換え抗菌蛋白質ヒトベータディフェンシン2(HBD-2)は生体互換的であり、細胞の増殖を増やした。HBD-2をコーティングしたインプラントの、臨床的抗菌性を調べるための、そしてまた、それらの存在下における、インプラント周囲組織再生の、安全性と効果を調べるための、インビボ治験が提唱される。
(JOMI,2013,28,982-988)