NITは可能か?

~根管洗浄のみでどこまで感染除去ができるのか~
まとめ
歯界展望 vol.134 No.4 2019-10

根管洗浄といえば、従前は洗浄針を用いての洗浄で、デブリ(根管内の汚物、壊死組織や根管壁象牙質の一部など)を洗い流すという意味合いが強かった。近年はin vitro の研究報告を中心に、根管洗浄の還流を以下に効率よく行うかが注目されるようになってきている。
ノンインスツルメンテーションテクニック(Non-instrumentation technique: NIT)とは、根管洗浄のみで、どこまでデブライドメントが行えるかを考察した治療手技である。実は20年以上前に考案されており、スイス・ベルン大学保存学分野のLussiらが報告している。報告では一般的な根管治療よりも時間短縮になるとしている。特に、複根管歯においてはおおいに治療時間を短縮でき、根管形成による便宜的な歯質削除を抑えることができる。装置を歯冠側にセットしたあとオートメーション化ができれば、きわめてシンプルな治療方法になり確実なデブライドメントが行えるようになれば治療の質が担保できる。このNITを具現化したものが、現在アメリカにてGentle Wave System(Sonedo)として販売されており、浸透し始めている。コンセプトとして、Lussiらの術式を発展させたもので、根管は小さいサイズや(#10や#15)のファイルで穿通性を確認する程度で、あとはこの装置が根管洗浄するというものである。まずはヴェイバーロック効果を防ぐために洗浄剤のガス抜き(degas)をタンク内で行い、毎分45mLの勢いでハンドピースへと洗浄剤が送り込まれる。本体内部の3つのタンクにはそれぞれNaClO、EDTA、生理食塩水が入り時間と共に洗浄剤はsoundbarと称されるチップ先端にあたり、根管内で広範囲のアコースティックとリーミングが形成される。このマルチソニックは洗浄剤をイスますやフィン、側枝や象牙細管へと届かせ、さらにハンドピース先端で同時に吸引する。そのため患歯とハンドピース先端は完全閉鎖的環境である必要があり、歯冠上部をオフィスホワイトニングで用いる歯肉保護レジンのような歯科材料により便宜的に築造する。
今日における根管治療の要は、「根管形成・根管洗浄・根管充填」である。根管治療は、日の医療保険制度の点からも、われわれ歯科医師にとって日々の臨床で最も悩ましい治療の一つであるが、上記のようなNITが現実味を帯びてくると、その術式に大きなパラダイムシフトが生まれるだろう。