無機質ヒト骨同種移植片による顎提保存を伴う抜歯後の治癒を組織学的に分析する

著者:Tina M,Beck 等
目的:抜歯と顎堤保存から3ヶ月後における新生骨形成量と、両被験者群で、同じ同種移
植材を用いた6ヶ月後のそれには、何らかの相違があるかを調べる。
材料と方法:
取り込み可能な被験者は、抜歯と歯科用インプラントによる置換を必要とした、10ミリ以上の骨支持を伴う単根歯を1本以上有していた。抜歯窩について骨の裂開、穿孔の存在について詳細に調べた。重度の歯周炎が認められた歯牙は取り込まず、全ての歯根が、その部位に埋入予定のインプラントの傾斜度と類似した傾斜度を有する事を条件とした。方法は充分に洗浄した後、250~1000μmの非凍結乾燥海面脱灰ヒト骨同種移植片からなる水和粒子を抜歯窩に軽く押し込んだ。抜歯窩は顎堤の骨頂まで満たし、移植片のトップに2層の生体吸収性コラーゲン創部ドレッシングを装着し、クロスマットレス法で縫合、固定した。
結果
成熟後治癒群に属していた22箇所の平均治癒期間は27週間(±14日)で、早期治
癒群に属していた16箇所の平均治癒期間は14週間(±11日)であった。
本研究で調べた全ての部位にて、新生骨形成が認められた。平均で14週間治癒させた部位と、平均で27週間治癒させた部位は、新生骨形成の量に関して統計的有意に異なっていなかった。様々な研究により脱灰ヒト骨同種移植片による顎堤保存法は治癒中の抜歯窩にお ける新生骨の形成を促進することが示唆されているといえる。
38箇所のうち4箇所では顎堤幅径不足のため、インプラントの初期固定を達成できなかった。これらの部位は幅径の喪失量が2ミリを超えていた。また別の部位では抜歯時に、頬側面の骨裂開が認められた。これらの所見より、初回顎堤幅径が小さい部位、頬側面にて抜歯窩壁の深い骨裂開が認められる部位、または抜歯後2週間以内に移植材の喪失が認められる部位は付加的な増多術が必要であろう。
結論
抜歯と脱灰ヒト骨同種移植片による顎堤保存から6ヶ月後における新生骨形成量または残存移植粒子の量は、3ヶ月の治癒後におけるそれらと、統計的有意に異ならない。よって抜歯と移植後、インプラント埋入まで長い期間置くことは本研究では支持されない。
また顎堤保存後3ヶ月目に埋入したインプラントと、より長い治癒期間後に埋入した
インプラントにて同じような量の新生骨成長が観察された事からそれらは類似した成
功率を有すると予測される。