歯周炎における病的骨喪失のメカニズムと制御

著者: P.Mark Bartold Melissa D.Cantley & David R. Haynes 

出典: Periodontology 2000 vol53 2010 ,55-69 

目的
将来の歯周治療では炎症反応にターゲットが当てられるだけでなく、進行する歯周炎と関連した歯槽骨の喪失を防ぐための、付随的な薬物も利用されるであろうことを示す事にある。 

歯周炎における組織損傷のメカニズム
歯周炎は歯肉縁下バイオフィルムに常在する微生物に対する、特異的な炎症反応である。
歯周炎の状況は、歯肉縁下微生物叢の構成の違いにより、臨床症状と疾病の進行速度という点でかなりのばらつきがある。
これは組織破壊を駆り立てる宿主の炎症反応であり、歯周炎の臨床症状に関するばらつきの大半は、宿主反応のばらつきに起因しうることが、最新の証明により強く示唆されている。故に、疾病の発症には細菌が不可欠であるが、感度の高い宿主に、それと関連した炎症反応が存在しない限り、細菌は疾病の進行を引き起こすには不十分である。

まとめ
病的な骨喪失を治療するための療法的アプローチとして、歯周炎に似た、軟組織と硬組織両方が関与する、リウマチ性関節炎などのような疾病での、慣例的な治療法には、非ステロイド系抗炎症薬、グルココルチコイド、並びに疾病修飾性抗リウマチ薬などのような、薬品の投与が含められている。

これらの治療法によって、炎症は軽減されうるものの、残念ながらこれらの薬物には、骨吸収の制御、または軽減に対する、直接的な作用はないようである。

また、骨喪失を治療するための療法的アプローチとして腫瘍壊死因子ーアルファ、ILが挙げられた。IL-1は炎症、結合組織の付着喪失、及び骨吸収の軽減に有意の作用があると報告されたが、腫瘍壊死因子ーアルファ阻害剤が、歯周パラメーターに及ぼす影響が調べられた研究に由来する結果は一致していない。

それぞれ、歯周治療に対し、抗吸収薬として真の効果を発揮させるには、さらなる研究が必要とされる。
吸収阻害療法吸収阻害療法としてビスフォスフォネート、ホルモン置換療、RANK/ RANKL相互作用、カプシンk、阻害剤IKKーb阻害が挙げられる。

ビスフォスフォネート、ホルモン置換療、RANK/RANKL相互作用に対しては副作用があり、歯周病に対してこの薬物を使うことが賢明か疑問視されている。


結論
慢性歯周炎と侵襲性歯周炎は骨喪失のメカニズムという点で何らかの相違があることの証明はほとんど存在しない。したがって、本レビューでは、破骨細胞によって媒介される骨吸収に関する、基本的なメカニズムをカバーし、現在と将来の治療ビジョンの概要を提供した。骨吸収を制御するために、効果的に目標設定がなされた治療法がまもなく利用可能となるであろう。それらは、歯周炎の感染的側面と炎症的側面をを軽減することを目的とした慣例的な機械的治療に、価値ある付随を提供するであろう。