MMP‐1プロモーター多型(‐1607・‐519)と関連した骨統合インプラントの失敗

研究目的
MMP‐1遺伝子プロモーターの2種類の多型(G‐1607GG、A- 519G)と、骨統合した口内インプラントの早期失敗との間に存在する関係を調査すること。

MMP‐1とは

・間質性コラゲナーゼがあることで、骨芽細胞は、破骨細胞を活性化させるコラーゲン断片を製造し、それによって、骨吸収をスタートさせることができる。

・ ヒトMMP‐1遺伝子のポジション‐1607におけるグアニンの挿入は、転写活性を高めることが示されている、2G 対立遺伝子を生み出す。
この対立遺伝子の存在は、卵巣癌、子宮内膜癌、骨ミネラル密度の変化、慢性の重篤な歯周炎と関連づけられている

・ MMP‐1のもう一つの多形性部位である、A‐519置換も報告されている

・JuraJda等はこれら2種類の多型(G-1607GG・A-519G)には関連性があることを確認した

結果

・G-1607GGポジションでは対照群と試験群との間に遺伝子型の存在に関する有意差が存在していた。

・A‐519G多型に対する対立遺伝子と、遺伝子型に対して、2つの群は有意に異なっていなかった

検討
・本研究では、MMP-1遺伝子の‐1607多型のGG/GG表現型は、非喫煙者の 早期インプラント失敗と関連していた。
G/G遺伝子型は対照群では62%で観察されたのに対し、試験群では34%で発見された。この遺伝子型を有する患者は、インプランンと骨統合に成功する可能性が高い。
本研究では、MMP- 1遺伝子のA‐519G多型は、早期インプラント失敗と関連しないこともしめされた。
・A-519多型と、早期インプラント喪失の関連性は発見されなかったが、骨統合におけるMMP-1の役割は、非喫煙者の失敗インプラントと関連した、ハプロタイプコンビネーションによって、インプラント失敗の発生において重要な、炎症反応と骨吸収における、このサイトカインの関与によって、裏付けられている。

・MMP‐1遺伝子は、骨統合過程に対して修飾効果を有しうることと、高めのMMP‐1発現のハプロタイプを有する患者は、繊維状コラーゲンの分解が過度であるため、インプラント失敗を経験する可能性が高いことが結果より示されている。

結論
・MMP‐1遺伝子のプロモーターの、多型G-1607 GGは、早期インプラント失敗の危険因子でありうることが示されている。
この多型を、失敗インプラントの、遺伝子マーカーとして利用できる可能性がある。 

・A-519多型マーカーは、骨統合の病的予知因子ではないことが結果より示されているようであるが、これを裏付けるためには、より大規模なサンプルサイズの研究が必要とされる。
・MMP-1のハプロタイプG-1607GGとA-519Gは、骨統合過程と関連しうることが
本研究より示されている。

まとめ
早期インプラント喪失原因として、遺伝子配列が関与している可能性が高い。
インプラントを希望する場合、インプラントの骨統合を得られるかどうか埋入前に判定できるようになる可能性がある。
また、連続的に骨統合に失敗している患者には原因となるマーカーを発見することで新しい解決法が見つかる可能性があるのではないか。