個歯トレーを使用した印象採得 
歯界展望 vol.133 No.5(2019-5)

本稿の目的:個歯トレー印象法の利点、および臨床応用された症例の紹介

個歯トレー印象法の利点
1.隣在歯のアンダーカットによる弾性変形を防止できる
2.印象材を可能な限り薄く均一にできるため、寸法精度に優れている
3.歯肉縁下マージンの確実な印象が可能になる
4.多数歯の印象採得に有利
5.唾液量の多い患者、舌圧の強い患者に有効

個歯トレー製作
1.間接法…模型上で製作
2.直接法…直接支台歯上で製作

個歯トレー印象法を実際に使用した臨床例

  • コーヌスクローネ義歯にて対応した上顎3歯、下顎5歯の少数歯残存症例
  • コーヌスクローネ義歯にて対応した下顎両側遊離端欠損症例

 

まとめ
個歯トレー印象法は印象採得の難しさを克服できる臨床の一方法である。細い支台歯では石膏模型の取り出し時に模型を破損してしまう可能性もあり、注意を要する。また印象採得前の若干の準備と何点かの勘所をおさえる必要もあり、万能の印象法ではない。しかし精密な印象採得を限られたチェアタイムの中で行うにあたり、患者と術者にとって操作性がより簡単な印象法であると考える。