インプラント維持下顎オーバーデンチャーを有する無歯患者にて、10年の追跡観察期間中に発生した、インプラント周囲粘膜炎とインプラント周囲炎

著者
Henny J.A.Meijer等 出展:J.clin Periodontol 2014 41 1178-1183
目的
2件の前向き研究で、インプラント維持下顎オーバーデンチャーを有する完全無歯患者にて、10年の追跡観察中に起きた、インプラント周囲粘膜炎とインプラント周囲炎の発生率を調べることにあった。
材料と方法
本評価のための患者は2件の臨床研究に由来する。これらの治験には、下顎骨が委縮していた患者を取り込んだ。全ての患者が安定性の低さと、維持力の不十分さがために、彼らの慣例的な可撤式義歯に対して常に不満をもっていた。上顎には全ての患者が、慣例的な可撤式義歯を有していた。インプラントの埋入時に、付加的な軟組織移植や骨移植は行わなかった。患者は全員、局所麻酔下で、下顎の左右犬歯領域に埋入するインプラントで治療した。インプラントの埋入から3か月を経て、標準的な補綴処置を行った。新しい上顎総義歯と、バーとクリップのアタッチメントで支持される、下顎オーバーデンチャーを作製した。
データの収集、ベースライン時、つまり、オーバーデンチャーの装着時と5年10年後に得たレントゲン像を分析のために利用した。患者のカルテからインプラントの喪失と、インプラント周囲疾患を治療するためのインプラント周囲手術を調べた。データの分析、改良型出血指数をプロービング後の出血(BOP)、スコア0はBOP-、スコア1.2.3はBOP+。インプラント周囲粘膜炎=2㎜未満のレントゲン像上骨喪失、BOP+、排膿。インプラント周囲炎=2㎜以上のレントゲン像上骨喪失、BOP+、排膿と定義した。
結果
オーバーデンチャー装着後5年目に4名病気、2名転居、4名死亡、オーバーデンチャー装着後10年目、7名病気、5名転居、 7名死亡のため評価出来なかった。また、評価に応じなかったことは、臨床状況にも、レントゲン状況にも依存しないものと推測された。臨床パラメーターとレントゲンパラメーターでは、治療期間中に2本のインプラントが失われた。オーバーデンチャーの装着時から機能後1年目にかけての機能期間中に、2本のインプラントが、感染を伴わない動揺が原因で失われた。5年目から10年目にかけて、10本のインプラントがインプラント周囲炎のために失われた。全ての症例で、インプラント受容窩6ヶ月間治癒させた後に、新しいインプラントを埋入した。これらの数を考慮に入れ、骨統合期間中に失われたインプラントも含めた時の、インプラントの5年後生着率は、98.7%、10年後は95.3%であった。
結論
1,総無歯患者にて、インプラント周囲粘膜炎とインプラント周囲炎は実際に発症する。
2,The Seventh European workshop on periodontologyで提唱された閾値を利用して計算したインプラント周囲粘膜炎の発症率は、5年の評価中51.9%、10年で57.0%であった。
3,The Seventh European workshop on periodontologyで提唱された閾値を利用して計算したインプラント周囲炎の発症率は、5年の評価中16.9%、10年で29.7%であった。