上顎洞拳上と関係した上顎洞炎とインプラントの予後との関係

著者:Young-Kyun Kim等
出展:INT.J.ORAL. IMPLANT2013.28:178-183
目的
上顎洞拳上と関係した上顎洞炎の発生を調べること。インプラントの予後に対して、上顎洞炎が及ぼす影響を分析すること
材料と方法
本後ろ向き研究は、the seoul national university Bundang Hospitalの2003年6月から2008年11月にかけて上顎洞の拳上とともにインプラントを埋入した259名の患者の予後を追跡観察した。男性患者165名、女性患者94名、平均年齢は51.47歳、338件の上顎洞拳上手術を行った。インプラントは計643本。98件の上顎洞拳上症例では155本のインプラントを、骨頂アプローチ法を介して埋入した。240件の上顎洞挙上症例では488本のインプラントをラテラルアプローチで埋入。観察期間は4-83ヶ月で、平均は35.5ヶ月であった。
結果
上顎洞炎が30名の患者の33個の上顎洞で発生した。上顎洞炎を伴っていたインプラントは74本でそれらは埋入したインプラントのうち、11.5%を占めていた。外科アプローチテクニック別の発症率は、骨頂アプローチ4.1%、ラテラルアプローチ12.1%で、上顎洞炎の発症率はレテラルアプローチ群の方が有意により高かった。発症時期は、上顎洞挙上後3週間以内に発症していた。上顎洞炎が発症した部位での、インプラントの予後については、インプラント部にて上顎洞炎が発症した後の74本のインプラントの生着率に対する様々な因子からの作用を分析した。性別に関しては、19名の男性患者の49本のインプラントにて、上顎洞炎が発症した。男性 失敗12本 生着率75.5%、女性 失敗1本 生着率96%、男性患者のほうが有意により低かったことが示された。ロジスティック回帰を利用してインプラントの生着を年齢、インプラントの長さ、及び径別に分析したが生着率の有意差は示されなかった。外科方法別では、骨頂アプローチ 生着率 83.3%ラテラルアプローチ 生着率 82.4%、上顎洞炎発症後のこれらの生着率に関する有意差はなかった。同時埋入と成熟後埋入別では、即時インプラント埋入群 上顎洞炎発症後の生着率 81.4%、成熟後インプラント埋入群 上顎洞炎発症後の生着率83.9%で有意差無しであった。非粘膜下治療と粘膜下治療では、非粘膜下治療 インプラント生着率100%、粘膜下治療 インプラント生着率79.7%で有意差無しであった。上顎洞炎の治療別の予後では、内科のみのアプローチ(抗生剤) 生着率69.7%、内科と外科の併用アプローチ(切開やドレナージのような外科治療後に抗生剤)生着率94.9%で有意差有りであった。
結論
1. ラテラルアプローチ群の方が骨頂アプローチ群よりも、上顎洞炎の発症率がより高かった。
2. 上顎洞拳上中に穿孔が開いた群にて、上顎洞炎発症率は高めであった。
3. 上顎洞炎が発症した群の方が、それが発症しなかった群よりもインプラントの生着率はより低かった。
4. 上顎洞拳上後に、上顎洞炎が発症した症例では、穿孔の発生、または外科手術法に基づく、インプラント生着率に関する有意の相違は見られなかった。
5. 男性患者の方が女性患者よりも、上顎洞炎発症部におけるインプラント生着率は、有意により低かったことが示された。
6. 内科治療と外科治療を併用した群の方が、内科のみのアプローチで治療した群よりも有意に高い生着率を有していた。